ウィーンからプラハへ——FlixBusで国境を越える
ウィーンを出て、次の目的地はプラハ。
移動手段はFlixBus。二階建てのやつで、乗り込んでみたらとなりに誰もいない。ゆったり座れて、充電器もばっちり。
出発直前、運転手とお客さんらしい人が何かもめている声が聞こえてきた。チェコ語かな。全然わからないけど雰囲気はわかる。けっきょく3分遅れで出発。ひとまず問題ないようで安心した。
ウィーンからプラハまでの所要時間はだいたい4時間弱。窓の外をぼーっと眺めながら、快適な移動だなあとひといきつけた。14:40ごろに15分休憩が入って、夕方にはプラハに着いた。
夜さんぽ

街を歩く人たちを見ながら思ったのが——美男美女多くない?気のせいかな。でも本当にそう感じた。
21時をすぎても両替所がやっている。バルカン半島の感覚からするとちょっと信じられない。さすが観光地のプラハ。

夜ごはんにレストランを探していたら、おもしろいところを見つけた。Vapianoというチェーンらしいんだけど、カード式の決済システムで注文するスタイル。入店するとカードを受け取って、それで注文のたびに記録していくしくみ。なんか新鮮。キンキンに冷えたグラスに、目の前でドラフトビールを注いでくれる。最高すぎ。


バーのお兄さんもおもしろい人で、気がついたらいろんなドリンクを飲んでいた。
雨のプラハ——旧市街をぐるっと歩く
翌朝、あいにく外は雨。

朝ごはんはフランス系カフェのPAULへ。メニューどれも魅力的すぎてなかなか決められない。結局オリーブオイルのチャバタパンにモッツァレラ、トマト、マスタードがはさまったサンドイッチと、チアシードのデザートを頼んだ。チアシード、ココナッツミルク、グラノーラ、イチゴ、ラズベリーの重ね盛り。朝からしあわせな気分。219コルナした。


おなかを満たしたら雨の旧市街へ。石畳がびちゃびちゃで、傘をさしながら歩いた。
旧市街のはじっこにある「HAVELSKE TRZISTE(ハヴェルスカー市場)」。ハヴェルスカー市場は観光客向けの市場で、いつ行っても活気がある。雨のせいかお客さんは少なかったけど、どんよりした空にオレンジのライトが照らしたカラフルな野菜や花が並んでいて、それはそれで絵になる。


旧市街広場(スタロムニェスツケー広場) に出た。
曇り空の下に、カラフルな建物がぎゅっと集まっている。いろいろなデザインの建物がひとつになっていて見どころまんさい。

旧市庁舎の壁にはりついているプラハの天文時計(オルロイ)。15世紀に作られたものらしく、毎正時に使徒の人形が動く仕かけがある。複雑な文字盤がふたつ重なっていて、上が時刻と天体の動きを、下が暦を示しているんだとか。ぱっと見では何がなんだかわからないけど、とにかくすごいものを見ている感じはした。

旧市庁舎のエントランスをくぐったところにある天井。三角形のアーチに、チェコの紋章と聖ヴァーツラフの絵が描かれていた。金と青と緑の色使いがあざやかで、思わず立ち止まって見上げてしまった。

塔はてっぺんまで登れる。この日は雲が低くてまっしろだったけど、それでも街の輪郭くらいは見えた。

広場の向こうに、ゴシックの双塔がそびえるティーン教会(ティーン聖母マリア教会)。とんがりすぎた塔が2本、建物の上からにょきっと突き出ている。ちょっと魔女の城っぽくて好き。

広場の中央あたりにある柱はマリア柱。2020年に再建されたもので、もともとは1650年に建てられたが、チェコスロバキア独立直後の1918年に倒壊。100年以上の時をへて復元されたらしい。
カレル橋へ——ヴルタヴァ川を渡る

旧市街橋塔をくぐると、カレル橋に出る。塔はゴシック様式で、彫刻がびっしりついていて重厚感がある。霧のせいでプラハ城がかすんでいて、それがかえってドラマチックだった。

橋を渡る手前、緑のドームをもつ聖フランチェスコ・セラフィンスキー教会と、その隣に聖サルヴァトール教会。どちらも堂々としている。聖サルヴァトール教会には「HANDS OFF UKRAINE, PUTIN」と書かれた青と黄色の垂れ幕がかかっていた。ロシアがウクライナに侵攻して、まだ数ヶ月。プラハに限らずウクライナを応援する旗などをヨーロッパではよく見かける。

ヴルタヴァ川の向こうに、オレンジ色の屋根の家並みと、丘の上にプラハ城がうっすら浮かんでいる。雨でかすんでいるのに、それが水墨画みたいでうつくしかった。これが晴れていたら一体どれだけ……と思うとちょっと悔しい。

橋を渡りきったところにあるマラー・ストラナ橋塔。こちら側の塔はふたつ並んでいて、背の高いほうと低いほうでデザインが違う。
マラー・ストラナへ——小地区をぶらぶら

橋を渡ると雰囲気ががらっと変わる。マラー・ストラナ(小地区)は、旧市街に比べて観光客が少なくて静かな感じ。石畳の坂道の両側に、古い建物がつづいている。路地の奥に聖ミクラーシュ教会の緑のドームがのぞいているのが、なんともいい。聖ミクラーシュ教会はヨーロッパで最もうつくしいバロック建築のひとつ。


カレル橋のそばで、屋台を見つけた。これがトルデルニーク。棒に生地を巻きつけて焼いたもので、外側がカリカリ、中は空洞になっている筒型のパン菓子だ。ピスタチオがまぶされたコーンに、ソフトクリームがのっかっている。
実際に食べてみると、もう、パラダイス。サクサクの生地とシナモンの香り、ソフトクリームのなめらかさが合わさって、止まらなくなる。

勝利の聖母マリア教会。ここに、プラハで最も有名な巡礼スポットのひとつがある。
信者が入口で水に手を浸して、胸の前で十字を切っていた。教会のなかは静かで、ろうそくの火がゆれていた。真剣な信者が多い印象。


祭壇に、プラハの幼子イエス像(バンビーニ・ディ・プラガ)がある。像は小さいけれど、宗教的にはチェコの国境をはるかに越える意義をもつ。奇跡を起こすと信じられ、世界中のカトリック信者に愛されている。

マラー・ストラナの小さな広場の中央に立つ柱は、ペスト記念柱。わたしは教科書でしか聞いたことのないペストだけど、かつての疫病がどれほど深刻だったかを思わせる。

旧市街のこういう街角の景色が好きすぎる。


プラハ城へ——丘の上の巨大な複合施設
午後、雨がすこしやんで空が明るくなってきた。
雨は、晴れが当たり前じゃないことを教えてくれる。晴れたときの喜びを倍にしてくれる——そんなことを思いながら、プラハ城のある丘を登りはじめた。

プラハ城の正門。入口の両側には巨人が格闘する彫刻があって、なかなかの迫力。門の前では衛兵が直立不動で立っていた。ここから先は広大な城の敷地がひろがっている。入場は無料ゾーンと有料ゾーンがある。

城の敷地から見下ろすプラハの街。オレンジ色の屋根が海のように広がる。どんより曇り空なのに、それでも十分すぎるくらいうつくしかった。

城のそばにあるロレータ(プラハのロレータ)。バロック様式の黄色がかった白い外壁が印象的な修道院で、正面には黒い彫刻がずらりと並んでいる。

聖ヴィート大聖堂。プラハ城の敷地内にある、チェコで最も重要な教会だ。ゴシックの塔がふたつ、灰色の空に向かって突きささっている。正面にはバラ窓と繊細な彫刻がひしめいていて、どこを見ても情報量が多すぎる。

なかに入ると、高い天井がさらに高く見える。奥のステンドグラスから外のうすぐらい光がさしこんでだおごそかな感じ。


反対側から見た後陣。複雑に組み合わさっていて、まるで生き物みたい。

聖ヴィート大聖堂のすぐ隣にある聖イジー教会。深い赤色の外観が印象的。プラハ城のなかでも最古の建築物のひとつだ。

さっきとはまた別角度から街を見下ろす。どこからみてもうつくしい中世の町並みがたのしめる。

ふたたび橋を渡って旧市街に戻る。

晴れてきたら一気に人が出てきた。プラハの旧市街はほんとうに密度が高くて、路地のどこを切り取っても絵になる。建物の装飾が細かくて、何度見ても飽きない。

旧市街の少し南、観光客が少し減る路地に入ると、こんな小さな広場がある。こういうところを歩くのがほんとうに楽しい。
散歩していたら若い女性がベビーカーを押して近づいてきて、最初はチェコ語で何か言ってきた。わからないと言ったら、今度はスラスラと英語で言い直してきた——お金をくれ、って。ヨーロッパでよく見るベビーカーを武器にお金をせびるスタイル。今のところまだ何も盗まれていないけど少し身が引き締まった。

旧市街の外れ、真っ黒な火薬塔(プラシュナー・ブラナ)。かつてプラハの旧市街への入口のひとつだった。名前の由来は、18世紀に火薬の保管庫として使われたことから。石造りの表面が年月で黒ずんでいて、そのくたびれた重厚感がたまらない。街なかにぽつんとそびえる感じが印象的だった。

火薬塔のとなりに立つ市民会館。ミュシャを筆頭にチェコの芸術家たちが内装を手がけた。外から見ただけでも、その装飾の密度に圧倒された。


広場近くで小さなマーケットが開いていた。ガラス工芸品や手工芸品が並ぶなか、ピルスナーのパラソルが並んだ立ち飲みスペースがある。
スーパーで節約の夜
今日は節約デー。ずっと外食していたら旅資金がつきるから。夜はホステルに戻って、大好きなスーパーBILLAで買い物。カマンベール、生ハム、サラダ、おそうざい、そしてビール。節約といいつつ意外と買ってしまう笑

ピルスナーをひと口飲んでやっぱりうまい。バルカン半島もビールは飲んだけど、チェコのビールはレベルが違う気がする。東欧のビールより断然、西欧寄りのほうが好みかもしれない。ピルスナーはチェコが発祥の地だから、本場で飲む意味がある。
生ハムもなぜこんなにおいしいんだろう。うっすらミント?それともゆず?どっちとも言えない不思議な風味で、くさみが全然ない。今日の摂取カロリーはたぶんやばいけどまあいっか。しあわせならね。
ホステルのキッチンをのぞいたら、ヨーロッパからの旅行者がさっとパスタをゆでていた。トマトソースを作って、パンにハムをはさんで。みんな手慣れている。私は全部スーパーのおそうざいなのに笑
プラハを離れる前に
まる2日間ずっと雨だったプラハ。
それでもこんなにうつくしかったんだから、晴れたらどれだけ——という気持ちがずっとあった。絶対また来る。
ただ雨のおかげで心の整理ができた気がする。雨の日は晴れがあたりまえではないことを教えてくれる。また来ればいい。あせらなくていい。
ウィーン、ブラチスラバ、ブダペスト、ベオグラード、サラエボ、コトル、ティラナ——バルカン半島をずっと北上してきて、プラハはその旅のおわりに近い街だった。プラハの石畳はどこか、バルカンの街とは違う、洗練された重みがあった。ほんとうに、いい街だった。
次に向かうのは、コペンハーゲン。北ヨーロッパへ、また移動する。今度は久しぶりの飛行機で。


