ウィーンに来たら、ぜひブラチスラバに寄りたい。
ウィーンからバスで約1時間。スロバキアの首都でありながら、観光地化されすぎていない、静かで独特の空気を持つ街だ。ウィーンの豪華さとも、バルカン半島の雑多さとも違う——かわいくて、ちょっとマニアックで、歩けば歩くほど発見がある。
ウィーン→ブラチスラバ|移動メモ
移動はバス。ウィーンからブラチスラバ行きのバスに乗り、8時30分定刻通りに出発。9時40分ごろに到着した。
乗り込んでみると、チケットに記載の座席番号がバス内に存在しなかった。15番という列がどこを見ても見当たらない。キョロキョロしていたら、同じ15番のチケットを持っている人があと2人いた。運転手に確認すると「空いている好きな席に座っていい」とのこと。
国境越えはなし。スロバキアもシェンゲン協定の加盟国なのでパスポートチェックがない。あっという間にブラチスラバに着く。
第一印象:かわいすぎて好きになった


バスを降りてとりあえず旧市街のほうへ歩き出した。特にプランはない。いつものごとく無計画に歩く。
すると——かわいい。まちが、かわいい。
パステルカラーの建物が並んでいて、石畳の路地が続いていて、カフェのテラス席から人の笑い声が聞こえてくる。ウィーンのような威圧感がなくて、バルカン半島のような混沌もなくて、ちょうどいい温度感の街だ。まちに人が少なく、静かだった。それがまた、気持ちよかった。
聖マルティン大聖堂(Katedrála sv. Martina)

旧市街に入ってすぐ見えてくるのが聖マルティン大聖堂だ。ブラチスラバで最も古い教会で、1452年建造。1563年から1830年にかけてハンガリー国王の戴冠式が19回も行われた歴史ある場所。

内部は白を基調としたゴシック建築で、静かでシンプルなうつくしさがあった。正面に向かってひざまずいている地元の人がいた。観光地じゃなくて、地元の人が普段使う生きた教会。
旧市街を歩く


旧市街の中心にあるフラヴネー広場(主広場)は、ブラチスラバ観光の起点になる場所だ。旧市庁舎の黄色いバロック建築と、広場に点在するベンチ、石畳——こじんまりしているけれど、居心地がいい。

通りの奥に足場に覆われた塔が見えた。ミハエル門(Michalská brána)だ。ブラチスラバ旧市街に唯一残る城門で、14世紀に建てられた。残念ながら工事中だったけれど、石畳の通りの奥にそびえる存在感は十分だった。

これはプリメイト宮殿の中庭。ピンク色の壁に囲まれた静かな空間で、中央に聖ゲオルギウスが竜を倒す噴水があった。
旧市街の銅像たち


ブラチスラバの旧市街には、あちこちに個性的な銅像が点在していて、歩きながら探すのがたのしい。
広場の角で帽子を持ち上げてにっこりしている銀色の像は「Schöner Náci(シェーネル・ナーツィ)」という実在の人物をモデルにした銅像で、「町にしあわせをもたらす像」として地元で親しまれている。
ベンチに腕をかけてこちらをちらっと見ているのはナポレオン兵士の像。

そしてブラチスラバいちばんの有名人、チュミル像(マンホールおじさん)。マンホールから顔を出す配管工の銅像だ。チュミルの頭をそっと触ると願いが叶うという言い伝えがあるらしい。
世界一かわいい日本大使館(たぶん)

ぶらりと歩いていて、思わず二度見した建物があった。ミント色の外壁に、緑のシャッターの窓、重厚な木の扉——そして建物のファサードには菊の紋章、そこから日の丸が下がっている。日本大使館だ。フラヴネー広場に面したこの建物、わたしがいままでみてきた日本大使館のなかでいちばんかわいかった。たぶん世界一かわいい日本大使館だと思う。
スロバキア国立劇場(旧館)


旧市街のすぐそばに、ネオバロック様式の堂々とした建物がある。スロバキア国立劇場の旧館だ。正面に噴水が置かれていて、建物の装飾も細かくて、ウィーンの劇場とはまた違う温もりがあるなと。
傘の路地と街のアート


頭上にカラフルな傘がびっしりと広がる路地が現れた。石畳の路地の上を、色とりどりの傘が埋めつくしている。となりはスロバキア近代美術の美術館、ガレリア・ネドバルカだ。

別の通りでは、鉄骨で組まれた巨大な格子状のオブジェが空中につられていて、中央にブラチスラバの紋章が描かれていた。ブラチスラバは歩くたびに「なんだこれ?」というものを見つけられる街だ。
青の教会(聖エリザベス教会)


旧市街から少し歩いたところにある青の教会(聖エリザベス教会)は、ほんとうに来てよかったと思う。外壁も内部も、すべてが淡いパステルブルーで統一されたアール・ヌーヴォー様式の教会で、「ハンガリーのガウディ」とも称される建築家レヒネル・エデンが1907年ごろに設計した。
ちょうどお祈りの時間に訪れ、中の様子を見学できた。青い柱、青いイス、天井まで続く青の世界——ただ静かに、うつくしかった。
ショッピングセンターで休憩

観光の途中たまたま見つけたユーロヴェア・ショッピングセンターで次の目的地に向けてトイレ休憩に立ち寄った。
ブラチスラバ城(Bratislavský hrad)


旧市街から坂道をのぼってブラチスラバ城に行った。正直、かなり疲れた。

丘の上に白くそびえる四角い城で、四隅に塔がある特徴的なシルエットから「ひっくり返したテーブル」なんて呼ばれることもあるらしい。


城の庭園は幾何学模様にかり込まれた生垣と花壇があって、きれいに整備されていた。


上からの眺めがよかった。
片方はドナウ川と「UFOブリッジ」と呼ばれるユニークな橋が見えて、川の向こうに旧市街とは対照的な都会的な建物が広がる。もう片方は赤い屋根の旧市街と聖マルティン大聖堂の尖塔、さらに奥にモダンな高層ビルが見える。このコントラストがおもしろかった。歴史の層が一度に見えるような眺めだった。
遅めのランチ

テラス席でかなり遅めのランチを食べた。スロバキアの郷土料理、ハルシュキ(halušky)だ。
ポテトを練って作るもちもちのスロバキア式の団子で、きのこのグラーシュ(煮込み)とサワークリームが添えてある。うまみが凝縮されていて最高においしかった。

一緒に頼んだビールはスタロプラーメン(Staropramen)。プラハ発祥のチェコビールだけど。歩き疲れた体にしみるおいしさ。
ただ、毎回レストランの会計が「なんかちょっと高くない?」と思っていたら、自動でサービス料が2ユーロほど加算されていた。スロバキアのレストランでは、カトラリーなどのカバーチャージ(príbor)として1〜2ユーロが自動加算されることがあるらしい。300円ちょっとだけど、知らないとびっくりする。
帰りのバス|不安な3分間
帰りはブラチスラバからウィーン行きのバスに乗った。「本当にここ国際バス停なの?」という感じのただの路肩のバス停。わたしを含む乗客3人がポツンと立っていた。バスは3分ほど遅れて到着した。不安な中で待つこの3分間の長さといったらなんの。
バスに乗り込むと、またしてもチケット指定の座席が存在しなかった。みんなてきとうに座った。
今度は国境でパスポートのチェックがあった——といっても、ボーダーポリスがバスに乗り込んできて顔をさっと確認するだけ。あっという間に終わって、そのままウィーンに到着した。
ブラチスラバは隠れた名所
ウィーンから日帰りで行けて、観光客が少なくて、かわいい街で、物価もウィーンより抑えられる。正直ここ、もっと知られてもいいと思う。
日帰りでも十分楽しめるけれど、できれば1泊してゆっくり歩きたかった。街の規模感が小さい分、「発見する」たのしさがある。チュミル像を探したり、傘の路地を見つけたり、青の教会のタイミングを狙ったり——計画なしで歩いても、ちゃんと楽しめる街だった。
ウィーンとセットでぜひ。


