【シャウエン女ひとり旅】スペインからフェリーで国境越え!波乱万丈の移動とモロッコの青い街

所要時間の目安: アルヘシラス出発→シャウエン着まで約8〜10時間(移動のみ)
難易度: ★★★★☆(英語・スペイン語がほぼ通じない区間あり)
この記事でわかること: フェリーの乗り方/タンジェMedの罠/バスターミナルまでの移動/シャウエンまでの全ルートと費用

「シャウエン」という街へ、絶対に行きたかった理由

青い。とにかく青い。

SNSで何度も見かけながら、まさかこんな場所が本当に存在するのかと半信半疑だった。でも気づいたら私はスペインのアルヘシラスという港町にいて、モロッコ行きのフェリーチケットを手に握っていた。

この日の移動はこれまでの世界一周中トップクラスに波乱万丈だった
(国境越えのバスで酒とカジノにおぼれた男に何時間もセクハラされたときの移動といい勝負)

フェリーを間違え、英語が通じないタクシーに乗り、見覚えのないビーチを3カ所ほど経由し、バスのなかではサウナ並みの暑さに溶けそうになった。それでもシャウエンに着いたとき、「来てよかった」と思えたのだから、この街の引力はたいしたものだと思う。

この記事では、アルヘシラスからシャウエンまでの移動方法を失敗談も含めて全部正直に書く。同じ失敗をしてほしくないし、でもこの道の「ハプニング込みのおもしろさ」も伝えたい。


まず知っておくべき「タンジェの罠」

スペインのアルヘシラスからモロッコに渡る場合、フェリーの行き先は大きく2つある。

港の名前特徴
タンジェ旧港(Tanger Ville)街の中心に近い。シャウエン行きバスが出ている
タンジェMed(Tanger Med)新しい港。街から約40km離れた場所

私が犯したミスがまさにこれだ。「タンジェ行き」のチケットをそのまま買ったら着いたのはタンジェMed。事前に「窓口でタンジェといえばたいてい新しいほうにつく」という情報を見ていたので何も考えずに買ったのが裏目に出た。

タンジェMedにはシャウエン行きの直通バスが存在しない。

着いてから気づいてひとこと、「最悪だ」と思った。

▶ 対策: チケット購入時に必ず「タンジェ旧港(Tanger Ville)行き」と明示して買うこと。FRS、Baleària、Trasmediterráneaなど会社によって行き先が異なるので要確認。


アルヘシラス港でフェリーに乗るまで

港に着いたのは朝8時前。マーケットの準備がはじまる前の時間帯で、果物や野菜が並べられていく光景がたまらなく好き。

フェリーターミナルのカフェでカプチーノを頼んだらなぜか紅茶が出てきた。萎える。2ユーロ払って単価0.1ユーロくらいのものが出てきた。違うと行っても伝わらず、交渉が面倒なので受け入れる。

搭乗ゲートへ向かう前に荷物検査とパスポートコントロールがある。余裕をもって並んでおく。

定刻の8:00をすぎても何も動かない。平日の朝だからか、乗客は私を含めてほんの数グループしかいない。本当に大丈夫か、と思い始めたころ——8時7分ごろ、「あいみーぇん」みたいなことを叫びながら男性が現れて鍵を開けた。そういうものらしい。

乗船しようとしたら前の椅子に座らされ、さっきまで一緒だった乗客はどこへ?と思ったら違うゲートに進んでいた。フェリー会社が違うのかもしれない。誰も英語が分からないのでコミュニケーションが取れず、翻訳アプリを使うのも面倒だったので、諦めて待つことにした。どうせ遅延だ。

8時20分ごろ、なかから女性スタッフが現れてようやく乗船できた。

乗り込むとびっくりした。広いフェリーのなかに誰もいない。

デッキに出て朝日が昇るところを眺めた。しばらくして船内に戻ると乗客が増えていた。それでも全部で30人ほどだったと思う。

フェリー乗船中の持ちものリスト

乗ってみて「これ必要だった」と思ったものをまとめておく。

  • ペン(船内で入国審査用カードが配られる。記入が必要なので忘れずに)
  • お菓子・軽食(昨日もっと買っておけばよかったと後悔した。船内にカフェはあるが高い)
  • 羽織れるもの(冷房が寒すぎる便もある。私は寒くて震えた)
  • オフライン地図(Wi-Fiなし。Googleマップのオフライン保存がおすすめ)

出航から30分ほど経つと、船内にパスポートコントロールの窓口が設けられる。列ができはじめたから早めに並んでおく。

せっかくのジブラルタル海峡越えだったが、あいにく曇りだった。それでも、海峡の両側にヨーロッパとアフリカ大陸がある場所を今まさに通っているんだという実感があって、やっぱりフェリーは楽しい。曇っていて風が冷たくて結構寒かったけど。


タンジェMedに着いてしまったときの動き方

10:15、港に到着。フェリーを降りるとバスに乗せられ、入国審査のある建物へ移動する。バスはそのまま港の外まで連れて行ってくれる——これはフェリーで隣り合ったおじさんが教えてくれた。入国審査カードを書いたか確認してくれたり、到着後の動き方を教えてくれたりして、本当に助かった。

入国審査・荷物検査を済ませるとエクスチェンジオフィスがあるので、ここでモロッコディルハム(MAD)に両替する。街なかより若干レートが悪いことがあるが、移動に必要な分だけ換えておく。

インフォメーションセンターに「シャウエンへの行き方」を聞いても、「外のタクシーに乗れ」といわれるだけ。もっと詳しく聞きたかったが電話中らしく、とりあえず外に出ろというので外に出た。海外のインフォメーションセンターが役に立たないのには慣れている。

外に出てバスのチケット売り場らしきところに聞いてみると「ここはチケット売り場じゃない」といわれ、シャウエンへの行き方を聞くと「ここから直接シャウエンには行けない」とのこと。

まじかよ。タンジェから直通のバスがあると聞いていたのに。

周りを見渡すと、観光客が誰ひとりいない。スタッフと地元の人が数人いるだけ。そんなことある?と不安になってきた。

タクシーの呼び込みに何人か声をかけてみたが、みんな同じことをいう。「ここからシャウエン行きのバスは出ていない」。これは本当にフェリーの行き先をミスっていたんだと確信した。

ここからシャウエン行きのバスは出ていない。 タクシーを使ってバスターミナルのある街まで移動する必要がある。


謎のタクシードライブ300DH

私以外にシャウエンに向かう人などおらず、情報もなく、もう面倒だったのでタクシーの運転手に乗せてくれるよう頼んだ。

「シャウエン行きのバスに乗りたい。バスターミナルに連れて行って」と何度もいったのに、「シャウエン?」と聞いてくる。直接シャウエンに連れて行こうとしているのか?と思い、先に値段を聞くと300DH。高い。渋ったけど本当に他の移動手段がなかったので仕方なかった。

乗り込んでしばらくすると、大自然に囲まれた山道を進みはじめた。これはどこだと思いながら、英語が通じないおじさんに頑張って伝える。「バス?バスだよね?バスに乗りたいんだよ私は」と。

通じない。

すると誰かに電話をつないでくれて、英語が話せる人が出てきた。「ちゃんとバスターミナルに向かっているから問題ない」とのこと。本当かよ、と思いながら信じるしかなかった。

300DHという高額をすでに了承してしまったのだから、ドライブを楽しむことにしようと切り替えた。フニデク方面を経由したようで、きれいなビーチを何カ所か通過した。ドライバーは場所の名前を叫びながら、私が「おお」とリアクションするたびにうれしそうにしていた。途中「このままシャウエンまで乗って行く?」と勧誘してきたが、絶対に嫌だ。高すぎる。

眠すぎて今にも寝そうだったけど、変なところに連れて行かれそうで怖いから耐えた。

地図でわかったことだが、タンジェMedから内陸への道は山を迂回するルートしかない。遠回りに見えていたが、タクシーが正解だったことをあとから理解した。


バスターミナルからシャウエンへ

地図を見ながら気づいたのだが、タクシーの運転手、よりによってタンジェからシャウエンに行けるバスターミナルのなかでもめちゃくちゃ遠いほうを選んできていた。ふざけやがって、と思いながらもう終わったことなので気持ちを切り替えた。早く一刻もタクシーを降りたかった。

バスターミナルに着いた瞬間、「そこはめっちゃモロッコだった」。

「マラケシュ?カサブランカ?シャウエン?」と旅行会社の勧誘がうるさい。

勧誘を全部断り、まずCTMバスの窓口に向かった。CTMはモロッコの大手国営バス会社で信頼度が高い。が、私が着いた時間は窓口が閉まっていた。窓口のなかをぼんやり眺めていると旅行会社がたかってくる。うざい。

すると男の子が英語で話しかけてきた。私の1歳上で、日本が大好きだという。アニメやマンガをよく見るとのこと。彼もどうやら旅行中らしく、シャウエンに行きたいと伝えると真っ先にある窓口に向かってくれた。アラビア語でしか書かれていない、1ミリも読めない窓口に。

次のバスは14:30発、25DH

「友だちと待ち合わせしているから先に行くね」と足早に去っていく前に「何かあったら連絡して」と連絡先を交換してくれた。ありがたかった。心強かった。

チケットをゲットした。が、あと2時間ある。


バスを待つ2時間の過ごし方

バスターミナルを出ると人の流れが坂の上に続いていたのでそっちへ向かった。バックパックを背負って上る坂は本当にきつかった。上の大通りにはおみやげ屋や食料品店が並んでいた。

お腹がすいたのでカフェを探したが、最初に入りかけた店は菓子パンよりハエのほうが多いレベル。もはやパンのチョコチップが飛び出てるんですかという具合に虫がすごくて、すぐ出た。

その後、一際ひとつだけ清潔感があっておしゃれなコーヒー専門店を見つけた。テイクアウトがメインだが少しイートインスペースもあったので入る。アラビア語メニューが読めなかったが「コーヒーとミルク」で合意し、シロップを選んでラテアート風に仕上げてくれた。久しぶりにおいしいコーヒーが飲めた。店員の感じもよくて、ほっとしあわせな気分になった。

ベンチで待っていると、姉妹が近づいてきてにこにこしながら話しかけてくる。アラビア語なので全然わからない。翻訳機を貸してというような雰囲気で、スマホを渡したら何か文字を打つのかと思いきや全然別のところを見ている。別のアプリを開いたり、写真フォルダを見たりして——返ってきたときにはなぜか高校のときの写真が画面に出ていた。…なぜそこを見ている。

これ以上いるとどんどん要求がエスカレートしそうで困っていたところに、奇跡が起きた。ポツリポツリと雨が降ってきた。

え?天の助け?

雨だからと言って屋根の下に移動するふりをして、そのままバスのほうへ逃げた。

注意: バスターミナルや周辺では子どもや女性から物をねだられることがある。ヨーロッパの感覚で堂々とお菓子を食べていると狙われやすい。食べるなら目立たないところで。スマホの貸し借りにも注意。


いざバスへ。しかし地獄の暑さ

14:30の30分ほど前にはすでにバスが来ていたので乗り込んで待った。

バスのなかがサウナだった。

冷房なし。外気温も高い。ありえない量の汗が噴き出してくる。
出発を待つ間、なにか大声で行っている人がいる。
最初はアナウンスかと思って注目しているとただのセールスだった。次つぎと売り子が入ってくる。何を売っているのかちょっと興味があるが、目を合わせないようにする。
歯磨き粉とかなぜ今それ?という感じのものを持って入ってくるのに、結構みんな買っていたのでおどろく。

出発は40分ほど遅れた。冷房がついたと思ったら見事に温風。死にそうだった。

そして、人生で初めてこんなに揺れるバスに乗った。すごい山道をひたすら進んでいく。私は乗りもの酔いしない体質だけど、暑くてめちゃくちゃ揺れて空気も悪いこのバスは、酔いやすい人にはかなりきついと思う。酔い止めは必携。


シャウエン到着。全部忘れた。

バスを降りたらいきなりすごい坂だった。最後の試練だった。肩に食い込むバックパックとともに一歩ずつ前に進む。

しばらく歩いて旧市街に入った瞬間から、景色が変わった。

青い。本当に青かった。

壁も階段も、花鉢も扉も、全部どこかしらに青が入っている。一歩踏み込むたびに「ここは本当に存在する場所なんだ」という感覚がある。

朝のアルヘシラスから数えると10時間近く経っていた。フェリーを間違え、タクシーに乗せられ、バスのなかでサウナにいた。全部この街にたどり着くための道のりだったんだと思えた。

モロッコはやっぱりモロッコだった。


アルヘシラス→シャウエン 費用まとめ

区間移動手段費用の目安
アルヘシラス → タンジェ旧港フェリー(FRS等)€40前後(時期による)
タンジェ旧港 → バスターミナルCTMまたは民間バス約50DH
バスターミナル → シャウエン民間バス約25〜35DH
タンジェMedに着いた場合タクシー+バスタクシー300DH+バス25DH

※1DH(ディルハム)≒約15円(2024年時点)

タンジェ旧港に正しく着ければ費用も抑えられる。私のように間違えると余分に300DHかかる。フェリーの行き先確認は本当に大事。


シャウエン旅のポイントまとめ

移動で失敗しないために

  • フェリーチケットは「タンジェ旧港(Tanger Ville)行き」と必ず明示する
  • フェリー乗船中に入国審査カードが配られる。ペンがあると便利
  • シャウエン行きバスは旧港近くのバスターミナルかCTM窓口で買える
  • スペイン語は最低限でも使えるとかなり助かる場面がある

持ちもの

  • ペン
  • お菓子・軽食(船内の売店は高い。乗る前に買っておく)
  • 羽織れるもの(フェリーの冷房対策)
  • 酔い止め(山道のバスは激しく揺れる)
  • モロッコディルハムの現金(港のエクスチェンジで両替可)

治安について
勧誘や物売りは多いが、危険な目に遭ったことはない。ただし人が少ない路地でのひとり歩きは注意。現地の女性にならって肩や膝を隠す服装にしておくと声をかけられにくい。スマホの貸し借りは慎重に。


おわりに

移動がたいへんなほど、着いたときの感動は大きい。シャウエンはその典型だと思う。

スペインからフェリーで国境を越えて、タクシーで山道を走って、サウナのバスに揺られた先にあった青い街。ガイドブック通りに行けることのほうが旅では少ない。想定外を楽しめるかどうかが、旅のおもしろさを決める気がしている。

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